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古典派経済学とマルクス(1)

2009-12-07 10:41


P81~82
 
 一般的定式の矛盾にあらわれた理論と現実との矛盾、すなわち、労働価値説と自己増殖する資本という事実との矛盾は古典派経済学を理論的に崩壊させた要因の一つであった。
 
 まず、商品の交換関係は労働の交換関係であることを確信していたスミスは、事実上、労働者と資本家とのあいだの交換は、より多くの労働とより少ない労働との交換だと考え、利潤や地代が労働者のつくりだす価値の不払い部分であることを知っていた。
 
だが、この事実はスミスをまどわせ混乱させた。それは、この事実がスミスが一方で確信してやまない労働価値説と矛盾するからである。この矛盾につきあたったスミスは、労働価値説が妥当する時期を資本が蓄積される以前に限ってしまう。昔は正しかったが今はもう通用しない、というわけである。
 
 このようなスミスの考え方にたいして、昔も今も、資本の蓄積以前も以後も、労働価値説は正しいと主張したのはリカードである。その際、リカードはスミスをなやませた問題の重大さに気づかず、交換を一般の商品相互の交換にかぎり、労働者と資本家とのあいだの交換を労働による価値規定の原則からは除いてしまった。
 
 労働価値説を一貫してつらぬいたことは、スミスにたいするリカードの理論的優位をしめしていたが、リカードは理論のために資本という事実を看過し犠牲にしてしまった。
 
一方、スミスは、結果的には労働価値説を放棄してしまったのであるが、重要な問題提起をした点でリカードにまさっていた。
 
 スミスのリカードにたいする優位は、資本主義が確立した時代に生きたリカードが資本主義以外の社会構成体を考えることができなかったのにたいして、スミスは不十分ながらも歴史的な視点をもっていたからである。
 
 いずれにせよ、スミスとリカードがそれぞれ矛盾におちいっただけではなく、古典派経済学それ自体が矛盾し分裂してしまった。
 
そして、この問題の真の解決をなしとげたのが、マルクスであり、その際労働力の売買の分析が決定的な意味をもった。
 
 
引用:
経済学と弁証法   平野喜一郎著
大月書店 1978年
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