P9~11
剰余価値の源泉の問題は、資本主義社会における諸矛盾と階級闘争とのもっとも深い根をあばき出し、資本主義の搾取者的本質を明るみにさらけ出すものである。
そして、全世界の階級意識をもった労働者に資本主義的搾取の本質を理解させたのは、じつに、剰余価値の法則の発見であった。
剰余価値をそれの特殊的形態たる利潤・利子・地代から独立させ、一般的形態としての剰余価値の概念の科学的規定を与えたマルクスは、剰余価値は価値法則が破られる結果えられるとしたかれ以前の経済学者とは反対に、剰余価値の生産はけっして価値法則を破ることによって達せられるのではなく、かえって、価値法則にもとづいて実現されることを科学的に証明した。
そして、マルクスは、「剰余価値の生産または貨殖は、資本主義的生産様式の絶対的法則である」こと、「資本の価値増殖、したがってまた剰余価値の創造が・・・資本主義的生産の推進的精神である」こと、を確認した。
剰余価値の生産は、資本主義的生産固有の内容であり目的であるから、この法則は、資本主義的生産の「すべての主要な側面およびすべての主要な過程を規定」している。マルクスは、剰余価値の理論にもとづいて、資本主義的生産のすべての経済法則と範疇との真の本質を暴露し、剰余価値の生産が資本主義経済にとって決定的な意義をもっていることを明らかにした。
この理論にもとづいて、マルクスは、資本とは生産された生産手段の総体であるというような物神的表象をうち破って、資本とは物そのものではなくて、まさに生産関係であること、資本の存在は賃労働の存在と不可分に結びついていること――「資本は賃労働を前提とし、賃労働は資本を前提とする」――、商品や貨幣はそれが剰余価値の生産に参加する場合にのみ資本となるということ、を解明した。
引用:
経済学の基礎 横山正彦著
東大学術叢書6 1955年3月31日発行
PR