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資本主義社会は商品生産社会であるということが、先の引用では第一に指摘されている。
われわれ人間は日常の生活資料をなんらかの方法で獲得しなければ生存しえない。古い時代は自然物を採取するという単純な方法で、生活物資を獲得した。次には自ら手を加えて生産するという方法に発達した。
それが現代になってみると、身のまわりの一切の品物は、もう手製のものはない。ほとんど総ての生活物資は、他所でつくられたものであり、それを購入したものである。われわれは、生活物資はもはや自分でつくることもなく、買うことによって獲得しているのである。すなわち生活物資はいまやすべて商品としてのみ獲得されるのである。
このことは、裏返していうならば、この生活物資をつくり、供給する生産者は、商品を生産しているのであって、自己の直接的な生活維持手段として物資を生産するのではないということである。
生産物はいまや商品として、売ることを目的に生産さるのである。現代は、社会の生産が商品生産であり、そういうものの連鎖として社会が成立する時代である。
もちろん生産物が商品としてつくられるという時代は、資本主義社会に限定されることではない。
商品生産それ自体は、古い時代から、資本主義社会が発生する以前にも存在していた。だから資本主義社会をたんに商品生産社会と規定するだけでは不十分である。マルクスも、この資本主義的商品生産は次のように限定して、考えている。
「資本主義的生産様式の傾向は、あらゆる生産をできるかぎり商品生産に変えることである。そのための主要手段は、まさに、あらゆる生産をこのように資本主義的生産様式の流通過程に引き入れることである。そして発展した商品生産こそは資本主義的商品生産なのである。」
引用:
資本主義発展の基本理論 金子貞吉著
青木書店 1980年
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