P174~175
本質は現象以外のどこかほかのところに見出されるものではなく、ただ現象のなかにだけ求められるものだということを弁証法は強調する。
現象はそのなかに本質を含んでいる。そこに本質を求めればそれを獲得しうる可能性があるのであり、本質自身がまったく現実的であるように、この本質の発見・認識はこの現象を通してまったく普通の合理的推理によって可能である。
もちろん本質が一度に直接に発見されるわけではないが、段階と手続を踏んだ多様な現象から得られたデータをもとにして、科学的な推理によって少なくとも本質の一面一面が発見されていくのである。
だから現象はただ直接にそこに与えられただけのものではなく、その背後に客観的に現実的なものとしてのその本質があるのであり、この本質はただ現象のうちに探究され、現象に対する知覚、経験、観察、調査なしにはこの本質は発見されない。本質と現象とはそのようなものである。
引用:
論理学―思考の法則と科学の方法
世界思想社 1987年
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