P117~118
【より根本的なものをとらえる必要性】
ところで本質的なものといっても、それはまた単純ではない。
本質的なものが多様な形態をとって存在しているのであって、それらをさらに分析して、それら複数の本質的なもののなかでなにがより根本的なものかを見極める必要がある。
たとえば現在の日本の社会でおこっているさまざまな現象をみてみよう。貿易摩擦からきた円高で不況が深刻になりつつある。あちこちの企業で生産を縮小して人員整理が行なわれ、失業者が増加しつつある。国鉄も赤字だからといって分割・民営化が行なわれる。ところが政府は大型間接税の導入とマル優の廃止で大増税を行なおうとしている。軍事費だけは増大されGNP1%枠の突破が実行されようとしている。労働運動の右傾化も進みつつあり、賃上げを要求しない組合がでてきたりしている。いま労働者や国民にとって思わしくない現象が続出している。
引用:
現代の社会観 浜林正夫編
現代の社会科学① 学習の友社 1987年
【諸現象の相互連関と変化】
これらの現象を一つひとつばらばらにみていたのでは、これらの現象は時の流れであり、時代の傾向だからしかたがないと考える人びともでてくる。しかしこれらの現象をただ現象として無批判に放置しないで、これらの諸現象の相互連関と変化のしかたをみていくならば、これら諸現象の背後にこれらの諸現象の原因となっている本質的なものがかくれていることがしだいにわかってくる。
すでにいま多くの人びとが気づいているように、それはまず中曽根自民党政府の反国民的な政策にある。中曽根首相は1986年の衆参同時選挙で「大型間接税は導入しない」「マル優廃止はやらない」とくりかえし、それによって304議席を獲得した。まさにウソとペテンとしかいいようのないやりかたで多数の議席をかすめとり、その数の力で悪政をすすめつつある。
このように中曽根内閣の悪政が諸現象の背後にある本質的なものなのだという認識はきわめて重要なものであるのはいうまでもない。
引用:
現代の社会観 浜林正夫編
現代の社会科学① 学習の友社 1987年
第二章 社会と歴史についての科学
第三節 社会と歴史における本質と現象
鰺坂 真
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