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本編のねらいと構成
『資本論』の目的
マルクスの『資本論』は、「近代社会の経済的運動法則を明らかにすること」(第1巻第1版序文)最終の目的としています。
ここでマルクスが「近代社会」といっているのは、かれが他の場所で「ブルジョア社会」とか「資本主義社会」といっているものと同じ意味であることはいうまでもありませんが、近代以前の社会にくらべて、「近代社会」は、どのような特徴をもっているのでしょうか。
「近代社会」とは、血統とか個人的腕力でもなく、また土地所有でもなく、まさに「カネがものをいう」社会です。カネ、つまり、貨幣は、資本の最初の現象形態であって、「近代社会」とは、資本が主体となった、資本の支配する社会にほかなりません。
「近代化」によって、大多数の人々は、奴隷主の鎖とか封建領主の経済外的強制からは自由になったのですが、こんどは資本のみえない鎖につながれることになってしまった。資本が人間を支配するようになったということ、さらにその支配の仕組みがきわめて複雑で、ちょっとやそっとではわからないものになっているところに、「近代社会」の特徴があります。
このような「近代社会」における資本の支配の仕組みを明らかにするとともに、資本が増大すればするほど、支配される人々も強力となり、やがてその団結の力によって、資本が人間を支配する体制そのものを変革せざるをえないことを示したものが、マルクスの『資本論』です。
引用:
マルクス 資本論入門
有斐閣新書 1976年
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